背景の描き込みとリアリティ

物語を描く時に主人公の特別感を出すのは作風によっては大事なことだと思うんですけど、主人公が特別過ぎるとリアリティが薄れるんですよね。良くある剣と魔法のファンタジー RPG の世界で、主人公が活躍するタイプの物語だとすると、その世界には主人公以外にも当然のように沢山の登場人物がいて、主人公がどういう訳か災厄の場に毎度のように居合わせているように、世界のあちこちで同レベルの災厄ですとか事件が起きていないと主人公が突出しておかしいわけですよ。そういうところの描き込みって大事ですよね。佳作に過ぎない作品ってのはそういうのがないなあって思います。もちろん背景を描き込み過ぎても読んでて邪魔なんですけど。現代社会と比較するのはおかしいですけど、世界のあちこちで起きている事件の情報ってのは流れてるわけですよ。剣と魔法のファンタジー RPG の世界でもそういった情報ぐらい流れてるはずでしょう。それを少し描写するだけでも印象がかなり変わりますよ。世界が生きている、世界の躍動感を感じられる。ただしそういうのを描写すれば描写するほどに整合性を取るのが大変になるでしょう。だから描写しないんですよ。つまり新聞みたいな媒体ですとか行商人が齎す情報ですとか、そういうのが描かれない作品はそれだけ手を抜いてるってことですよ。物語が進むにつれて読者に開示される情報が増えて行くってのはファンタジーものとかミステリーものとかでは大事だと思っています。少しずつ世界の深層に近づいていく。今まで分かっていた情報が誤った情報であったり、何者かによって意図的に流された偽りの情報であったり、歴史書の記載に誤りを見つけたり。そういうのは面白さの一つだと思ってます。それはそれで良いんですけど、雑多に飛び交う情報ってのも大事ですよね。雑多に飛び交う情報の中に重大情報があったりしてさ。だけどそういうのが多いと真相に少しずつ近づいていく過程を作者がコントロールしづらくなって、読者があーだこーだ言い易くなって先の展開を予想しやすくなる。そういった面からも雑多な情報を描写しないのは手抜きと言えます。主人公の周囲の描写しかなくて、主人公が毎度のように事件に巻き込まれて、それを乗り越えたり解決したりして、成長したり富を得たりするって展開がずっと繰り返されるのは読んでて苦痛です。それを苦痛に思わせないだけの技量がある人もいますけど。でもそれだけだと俺は不満だなあ。その程度かって思ってしまう。まあ図書館などでタダで読める本にそこまで求めてないですし、しょうがないのかなって思いますけど。まあその程度だよねって思います。